2009年03月31日

3月31日


「百年はもう来ていたんだな」と此の時始めて気が付いた。



夢十夜 他二篇

著者名:夏目漱石(著)
出版社:岩波書店
出版年:2003.04
ISBN :9784003101193

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2009年03月30日

3月30日


ああ、やっときてくれたんだね。
いつもきみの夢を見ていたんだ。
夢を見るたびに、きみを愛する想いが熱くなった。
骨の折れる道を歩いているのも見たし、船で海を渡ったり、馬車で夜に旅をしているのも見た―なにもかも、何度も何度も見たんだよ。



壜の中の世界

著者名:クルト・クーゼンベルク(著)
前川道介(訳)
出版社:国書刊行会
出版年:1991.10
ISBN :9784336030603

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2009年03月29日

3月29日


哀れとは思うまいぞ。
このまま埋れて一生を消されまいぞ。
そのように生まれついたのならばそのように生きて、生きた証を堂々と天下に知らしめてやろう。



影の姉妹

著者名:佐々木丸美(著)
出版社:ブッキング
出版年:2007.12
ISBN :9784835443539

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2009年03月28日

3月28日


もしかしたら、きみはもうわたしを忘れてしまっただろうかね?
プラテーロ、さあ、言っておくれ、きみはまだわたしのことを、おぼえているかい?



プラテーロとわたし

著者名:J.R.ヒメーネス(著)
長南実(訳)
出版社:岩波書店
出版年:2001.02
ISBN :9784003273319

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2009年03月27日

3月27日


 はにかみやで、おとなしくて、用のあるときまでは隅っこにすわっていて、他人のためにつくすことが生きがいであり、ですからこの小さな炉端のこおろぎが鳴くのをやめて、やさしくほがらかなそのすがたが、静かな影のかなたに消え失せたあとになって、はじめて周囲はその献身のほどを思い知らされるのです。



若草物語

著者名:L.M.オルコット(著)
矢川澄子(訳)
出版社:福音館書店
出版年:1985.01
ISBN :9784834001600

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2009年03月26日

3月26日


人間は夢を見、また希う。

 ・・・・・・・・・・

人間がみずからの夢をみるとき、かれはその夢と戯れあう。

 ・・・・・・・・・・

ああ! ぼくが夢見ている最中に、どうしていま自分が夢のなかにいることを知れましょう?
もっともすばらしい夢は、目醒めた世界で真実といっているものと紙一重ではありませんか。



リリス

著者名:ジョージ・マクドナルド(著)
荒俣宏(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:1986.10
ISBN :9784480020918

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2009年03月25日

3月25日


この世では、生きるということは、夢を見るということにすぎないのだ。
生きている人は、目が覚めるまで生きている夢を見つづける、そう教わった。

いわばこの世は、すべての者が、そうとは知らずに、それぞれの夢を見ているのだ。

人生とはなんだ? 狂気だ。
人生とはなんだ? 幻だ。影だ。戯言だ。
最高の幸福など、取るに足らないものだ。
人生はすべからく夢。
夢は夢なのだ。



ベスト・プレイズ

著者名:
出版社:白凰社
出版年:2001.07
ISBN :9784826200929

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2009年03月24日

3月24日


以前はこの世の果てからわたしを呼んでいた声が、今わたしの傍で語りかけているように思われた。
その声は部屋にいるわたしから離れず、それどころか、わたしの体の内から、あるいはわたしのすぐ後から聞えた。
かつてその声が遠くから発せられたから聞きにくかったとすれば、今度は近すぎてよく理解できなかった。
近すぎたために見えなかったのであり、平明すぎたために理解しにくかった。
いつもわたしから離れなかった声のようにも思われた。



喜びのおとずれ

著者名:C.S.ルイス(著)
早乙女忠(訳)
中村邦生(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2005.12
ISBN :9784480421685

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2009年03月23日

3月23日


あなたが年老いて髪に霜おき 眠りこけてばかりいて
炉ばたでこっくりしだしたら この書をとりだして
ゆっくりと読みながら むかし あなたの眼にあった
やわらかなひとみと 深いかげりをゆめみなさい



W.B.イェイツ全詩集

著者名:W.B.イェイツ(著)
鈴木弘(訳)
出版社:北星堂書店
出版年:1982.01
ISBN :9784590006543

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2009年03月22日

3月22日


 ひとつだけを割ってしまった揃いのティーカップ。ひとつだけなくしてしまったゲームの駒。一本だけ抜けてしまった乳歯。
 揃っているはずのものが、ひとつだけ欠落してしまうのは、ひどく落ち着かない気分にさせられる。自分にとってのその物の持つ価値の大きさだけのあぶくが、心の中にぽっかりと浮かぶのだ。



ななつのこ

著者名:加納朋子(著)
出版社:東京創元社
出版年:1999.08
ISBN :9784488426019

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2009年03月21日

3月21日


耳を澄ますがいい。
サウダーデは海嘯のようにおし寄せる。
幾重にも、幾重にも連なって。
その語るところに心を傾けたまえ。
進むべき先を明かしているにちがいない。
怖れず、怯まず、歩むがいいのだ。
それは未来を語る声なのだから。



サウダーデということ

著者名:諏訪勝郎(著)
出版社:彩流社
出版年:2008.12
ISBN :9784779113949

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2009年03月20日

3月20日


方其夢也
不知其夢也
夢之中又占其夢焉
覺而後知其夢也


夢を見ているときには
それが夢であることは分からず
夢のなかでまた夢占いをしたりして
目が覚めてから始めてそれが夢であったことが分かるのである。



荘子 第1冊 内篇

著者名:荘子(著)
金谷治(訳注)
出版社:岩波書店
出版年:1971.01
ISBN :9784003320617

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2009年03月19日

3月19日


ことによるといつの日か、自分が最初にいた世界へ戻れないともかぎらない。
だから、とりあえず今は、そちらの世界について書きつけておきたいと思う。



シャムロック・ティー

著者名:キアラン・カーソン(著)
栩木伸明(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2009.01
ISBN :9784488016494

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2009年03月18日

3月18日


それはとおーいむかし、昔々の物語。
そこにわたしがいたのなら、今ここにはいないだろう。
わたしがここにいるのなら、あのときとはまさに今のこと、わたしは年老いた話じょうずで、語る話は時に磨かれているかもしれぬーもっとも、話を思い出せれば、のハナシだがね。
そもそも話には三つのよいところがあってな。
ひとたび語られるやいなや聞かれたいと願い、聞かれれば真に受けられたいと願い、真に受けてもらったらまた語られたいと願うのが、話の本性。
一方、話には三つの敵がある。
とめどないお喋り、粉ひきのごっとんごっとん、金床のカチンカチンー



琥珀捕り

著者名:キアラン・カーソン(著)
栩木伸明(訳)
出版社:東京創元社
出版年:2004.02
ISBN :9784488016388

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2009年03月17日

3月17日


 彫像にかくも柔らかき息吹きを与えし者あらず
汝は生ける大理石が〈私はまことに歌う〉と言うのを聞こう
古きギリシアの栄光ありし時代に
ロードス島の人びとは彫像を鎖で繋ぎ留めたというが
それはこの芸術家の素晴らしき彫像にこそ欠くべからざるなり
かつて多くの工匠が優れた技で彫刻に為したことすべてを
いまドナートは一人で為せり
大理石に生命と 愛情と動きを与えん
たとえもの言わぬとも 自然はこれ以上のものを与え得ようか



ルネサンス彫刻家建築家列伝 新装版

著者名:ジョルジョ・ヴァザーリ(著)
出版社:白水社
出版年:2009.01
ISBN :9784560095010

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2009年03月16日

3月16日


人の住む家屋からもれる灯や人びとで賑わう街角をながめるより、むしろ、この世から旅立った人びとの憩う静かな墓地のほうがほっとするのであろう。
ものいわぬ墓石が賛同の意を示すように柔らかい陽光をうけて立ち並ぶ

……………

「あんた、つくられた骸骨なぞ探し求めないで、そこら辺の墓石でもじっと見ているほうが、安らかな気持になれるものさ」。



屍体狩り

著者名:小池寿子(著)
出版社:白水社
出版年:2000.07
ISBN :9784560073469

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2009年03月15日

3月15日


ここにわたしはおまえたちを捕らえている
おまえたち言葉よ
わたしを血にいたるまで綴りながら
捕らえている言葉よ
おまえたちはわたしの心臓の鼓動
わたしの時を数えている
この名前を持った虚ろを

わたしに歌う鳥を
見せておくれ
さもないとわたしには愛と死が同じものに思えてしまうからー



ネリー・ザックス詩集

著者名:ネリー・ザックス(著)
綱島寿秀(編訳)
出版社:未知谷
出版年:2008.11
ISBN :9784896422474

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2009年03月14日

3月14日


悲劇を生きたのはイネーシュではない。
無論、ペードロでもない。
公私の間で煩悶しつつ無情な断を決したアフォンソ四世でもなければ、王国の後難を憂い諫言におよんだがために、後に処刑された重臣たちでもない。
彼らの人生は賑やかだ。
凡そ同情を買う人生ほど賑やかなものはない。
しかも彼らは、後世にことばを遺した。
少なくとも語るべき台詞は与えられた。
彼らの舞台は、観る者の心に媚びた。
しかしながら、彼らも観客も、その舞台の屋台骨がとある沈黙でできていることに気づかない。
その雄弁かつ華麗な舞台がただひとつの沈黙を支えに成立していることを、誰もが忘れている。
ここに、この物語にひと言たりとも遺さなかったひとの優雅な沈黙が浮上する。
その優雅な沈黙こそ、真実の悲劇を語るものである。
またそれゆえに、そこには一鱗の同情をも拒む威厳ある孤独が屹立している。

そのひととは、コンスタンサ妃である。



サウダーデということ

著者名:諏訪勝郎(著)
出版社:彩流社
出版年:2008.12
ISBN :9784779113949

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2009年03月13日

3月13日


デイジーが 草地を飾り
クロツグミの 澄んだ声がきこえるころ
かげりない悦びに 心ははずみ
めぐりくる 春の日々を迎える

            バーンズ



カントリー・ダイアリー 新版

著者名:イーディス・ホールデン(著)
岸田衿子(訳)
前田豊司(訳)
出版社:サンリオ
出版年:1992.09
ISBN :9784387922629

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2009年03月12日

3月12日


九百年前の地中海で栄えた不思議な王国への手掛かりは、図書館の薄暗い一室で目にした一冊の書物だった。
表紙を開くと、そこには、色鮮やかな花が咲き乱れ、めずらしい果物が実る南国の楽園で、美しいイスラム教徒の侍女たちにかしずかれるキリスト教徒の王たちが描かれていた。
青い星空を背に浮かびあがる宮殿。
書物に記された王国のイメージは、西欧人が憧れるアラビアン・ナイトの世界そのものであった。

……………

謎に満ちたこの中世王国への旅は、案内人なしに進めることはできないだろう。
修道院古文書館に眠っていた虫食いだらけの羊皮紙文書や土に埋もれていた墓碑銘を手掛かりに、迷宮にも似た王国の扉を一つずつ開いていくことにしよう。



中東イスラム世界 4

著者名:高山博(著)
出版社:東京大学出版会
出版年:1995.09
ISBN :9784130250245

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