きょうは世界じゅうがまるで、
生まれたばかりのようにうつくしい。
おまえはこの緑なす高原で
もろもろの重荷をおろしたのであった。
草ひとくさごとに朝つゆが
陽にてらされてあかるく光り、
澄みわたった青空には
ユングフラウの銀嶺がうかんでいる。
枝ひとえだごとに小鳥たちが
色どりゆたかに羽根をふるわし、
最後の黒からすは里さして、
とんでふたたびかえらない。
もうしばらく、短い時をしっかとつかまえよ。
もう人生を不愉快にしてはならない。
春のあらしがすぎ去れば、
うるわしき夏のよろこびがくる。
ヒルティ伝
著者名:
出版社:白水社
出版年:2008.05
ISBN :9784560024683
