ただ、すぐ近くの一階の桟敷にすわっている少女だけが、芝居の方を見ていなかった。
真青な顔である。
家族の人たちが、彼女を介抱している。
私は彼女が言葉では言いつくせないほど美しいと思った。
顔は涙に濡れている。
私は彼女を見つめた。
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私は正面の玄関にむかってゆっくりと流れて行く人波の中に加わっていた。
出口の方へ視線をむけていたが、ふと誰かが近くで自分を見つめているように感じて視線を返した。
そして事実私の眼は大きな美しい瞳とむかいあったのであった。
晩夏
著者名:アーダルベルト・シュティフター(著)
藤村宏(訳)
出版社:筑摩書房
出版年:2004.03
ISBN :9784480039446
