「額縁」は絵画と家具の両領域にまたがっている。
絵画と他の事物との境界をなすと同時に、絵画とその周辺の環境とを融合せしめ、両者の調和をはかるものである。
「額縁」とは、納められた絵画と不可分の結びつきを持つ一つの特殊な機能の呼び名である。
クラウス・グリム『額縁の歴史』(前堀信子訳)より
額縁への視線
著者名:小笠原尚司(著)
出版社:八坂書房
出版年:2008.07
ISBN :9784896949124
8つめと、これからなされる1つの日付
僕がもし、あなたの興味を誘うことができなかったら、途中からいつでも僕をお見捨てになって結構です。
でもあなたがもし最後まで僕についておいでになり、僕に八つ目の冒険を、きょうから三月以内の十二月五日までに始めて、そして終ることをお許しくださるとしたら、あの大時計が八点鐘を鳴らすちょうどその時―
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あなたは僕の言うことを聞きとどけてくださらなければいけません……
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親愛なるお友達
お手紙もたまわらぬまま、またもや二週間がすぎました。
僕らが協力の期限ときめた十二月五日というやっかいな期日までに、もはやお手紙はいただけないものと諦めます。
そして僕は早くその日が来ればよいとさえ願う者です、理由はその日が来さえすれば、あなたは、もはや、あなたにとって興味のなくなっている契約から解放されるからです。
僕にとっては、僕らが二人で協力して戦いとったあの七つの勝利は、無限の歓喜と興奮の時間でした。
僕はあなたのおそばで暮していました。
あなたがその生活を、より活溌に、より感動深いものにしていてくださる恩恵を身にしみて感じていました。
僕はいかにも幸福でしたので、それについてあなたに語ることもできなければ、あなたに喜んでいただきたいという欲求と、あなたに対する熱烈な敬愛の情以外、秘めた心の愛情は、何一つお見せできなかったほどでした。
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彼女は心の中で、自分に言い聞かせ続けるのだ、レニーヌが約束の八つの条件を満たし、今夜八時が鳴る前に、あの紅瑪瑙の止め金を自分のために取り戻してくれたにはちがいないが、その八時はアラングル城館の大時計が打つものであって、よそのそれではないのだから、自分にまだこの点で余裕があるのが当然だと。
その約束は厳存していた。
あの日レニーヌは、あこがれの彼女の唇をじっと見つめながら、〈あの銅製の振子はまた動きだすでしょう、そして定められた十二月五日という日、またしても八つ打つことになりましょう、その時こそは……〉と、希望をこめて言ったではないか。
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そして時計の一点鐘が鳴りだした、次いで二点鐘が、そして三点鐘が……。
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冒険はこれで全部が終っていたが、ただ一つだけこれからなさるべき分が残っていた、そしてそれに対する期待が、他のすべての冒険の思い出を消し去っていた。
『八点鐘』(モーリス・ルブラン/堀口大學 訳/新潮文庫)
